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それから2週間ほど経った頃だろうか。
ホームルームで、最近やけに不良が出歩いているという話を聞いた。

学校に来るようになった朽木は、俺の隣の席で「恐いですねぇ」と飄々とした様子で呟く。


「お前さ、恐いなんて思ってねえだろ」


こちらも呟くように返事をすると、朽木は一瞬目を丸くしたかと思えば、今度は嬉しそうに笑った。


「いやいや、思ってますよ?」


…絶対思ってねえな。
それはあえて口に出さず、無言のまま朽木の額に指を弾く。
いわゆる『デコピン』というやつだ。


「痛ぁぁい!会長さんのデコピン痛っ!」


額を抑えながらわざとらしく言う朽木を無視して「おら、ショートホームルーム中だぞ。静かにしろよ」と小声で告げる。
すると朽木は慌てて姿勢を正した。

それを見て俺が笑ったことは、言うまでもない。





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