朽木の頭を自分の胸に押し付けるように抱え込む。
自分の早い鼓動の音と、朽木の乱れた息が混じり合う。


「か、いちょ、さ、」

「うん、」

「ぅ、っ」


朽木は小さく俺の名前を呼んでから、また小さく嗚咽を漏らしながら泣いた。

俺は朽木の震える小さな肩を、ただ抱いてやることしかできない。


「怖かっ、た、んです」

「うん」

「悲し、かったん、です」

「うん」

「ずっと、誰かに、助けて欲しかった、んです」

「うん」


大きな雫を落としながら、朽木はぽつりぽつりと呟く。
俺はといえば、ただ淡々と相槌を打つだけ。

それでも俺は間違ってないと思うし、朽木も楽だと思う。


救ってやれないことは悔しいが、終わったことを悔いたって仕方ない。
今ある現実を受け止めてやることが、朽木にとっても俺にとっても、今できる最善の行動だ。



それから暫くして、朽木は泣き止んだ。





.