「恐怖とか不安とか、そんなのなくて、ただ痛くて悲しくて…

それからやるだけやって、そこに放っておかれたんです。
そこにたまたま警察の人が来て、保護されました。」


朽木は目を潤ませる。
苦しそうな朽木に何もしてやることができなくて、俺は唇を噛んだ。


「別に気にしなきゃ良いだけなのに、たまに色んな人がおれを襲った人に見えちゃって、外に出るのが怖くなったんです。

誰かに顔を見られるのが怖くて、誰かの顔を見るのが怖くて、眼鏡をかけ始めました。
そしたら、今までの自分を隠すことができるようになったんです。

それで、」


朽木の大きな目から涙がこぼれる。
朽木は少しだけ涙を止めようと足掻いたあと、自分の手で顔を覆った。


なぜ、自分を隠そうとするのだろう。

俺がまだ知り合って間もないから?
昔のことを思い出すから?

そんなことどうだって良かった。
ただ、俺の前だけは、自分に素直になって泣いて欲しかった。


「かいちょ、さ、ん?」

「泣けよ、誰もとめねぇから」





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