俺達はしばらく話してから、帰り支度を始めた。

朽木と爽司はトイレだと言って席を立った。
だから今は天原と二人きりなわけだが、


(…気まずい…っ!!)


天原は相変わらずにこにこと笑っている。

正直、まだこいつがどんなやつか分からない。

朽木のことが好きなのか?
ってかむしろ付き合ってるとか?


「気になります?」


天原が口を開く。
突然のことで、天原に目をやるしかできない。


「ふふ、雛春のこと、好きなんでしょう?」


ふんわりと微笑みながら天原は俺に問い掛けてくる。


「は、なんで?」

「なんでって…笹田くんの顔を見てたら誰だって分かりますよぉ」


可笑しそうに笑う天原に、何だか全てを見透かされているような気がしてならない。
本当に何者だ?こいつ。


「険しい顔ですねぇ、そんなに警戒されると寂しくなっちゃいます」


言葉とは裏腹に、天原はからからと笑う。


「腹が立つから雛春とのこと、教えてあげません」


教えてあげようと思ってたんですよ?と天原は言う。
俺が呆然としていると、天原は目つきを変えた。


「貴方には、雛春はあげません」


天原の口角は、未だ上がったままだった。





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