「…でっけぇ…」
ぽつりと呟いた言葉の通りだった。
こんなに大きな家があったのかと驚きつつも、とりあえず仲茅に電話だ。と数少ない持ち物のうちの一つの携帯をポケットから取り出す。
委員会の顧問、そして担任として登録された電話番号に発信すると、3コール程度で相手に繋がった。
『おお、彰!行けたか?』
妙に明るいその声にいつもなら怒鳴るところだが、今は目の前の家のでかさに免じて許してやることにした。
「おう、着いた。どうすりゃ良いんだ?」
そう問えば、電話の相手は突然深刻そうな口ぶりになり、思わず生唾を飲み込んでしまった。
『実はな、そこの家、うちのクラスのやつの家なんだよ』
そう言われて表札を見ると、綺麗な文字で「朽木(クチキ)」と彫られてある。
「朽木なんていたか?」と頼りにならない担任に聞くと、電話の向こうで悩んでいるような唸り声が聞こえてきた。
何かにふっ切れたのかは知らないが、よし、と呟いた電話の向こうの担任はあのな、と言葉を紡ぐ。
『朽木…あー、朽木 雛春(スバル)って言うんだけどな』
「すばる…この雛に春ってヤツか?」
表札にある名前を目で辿る。
名字と同様に綺麗な文字で書かれていた名前は、女の名前のようだ。
『あー、うん。そいつ、不登校なんだよ』
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