朽木はまず擁一郎に目をやり笑う。
それから俺を見てはにかんだ。

おい。他の奴と差を出すな。わざとか。

緩みそうな顔を手のこうで隠しながら、ちらりと朽木に目をやる。
すると朽木は少しだけ頬を赤らめながら口を開いた。


「あの、会長さん」

「な、何だよ」


突然名前(というより愛称?)を呼ばれ、ついキツい口調になる。
あぁもう俺のばか。
てか呼び方可愛い。くそ。

自己嫌悪に陥りかけているのを知ってか知らずか、朽木はにこりと微笑んで首を傾げる。


「あの、また会いに来ても良いですか?」


唐突の言葉に、完全に俺は落ちた。
何って、恋に。


「別に良い、けど、何で」


すごく嬉しいくせに、ぶっきらぼうにそう返す。
やっぱ俺ヘタレだ。


「ふふ、」


面白くもない俺の問いに、朽木は楽しそうに笑う。


「内緒ですよ!」


そう言って立ち去る朽木に言葉を失った。
なんだあの可愛い生き物!

この言葉で恋に落ちない輩はいないのか、擁一郎が「朽木くん、めっちゃ可愛いなぁ」と言って俺に殴られたのはまた別の話。



***



「雛春おそい」

「へへ、ごめん」


「…ねぇ、桜?」

「ん?」

「おれ、会長さんのこと気に入っちゃった」

「え、」





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