「私、そろそろ帰るね」
 そう言って優が立ち上がったのは、それから三十分くらい経ってからのことだった。
「もう帰っちゃうの? まだ終電はあるだろ」
 太輝の質問は、優から睦也に変わっていた。
「ちょっと疲れちゃって。一人で帰れるし、睦也はまだ飲んでて」
 そう言うと財布からお金を取り出し、そそくさと出口へ向かってしまった。
「お前も帰れ」
「だって、あいつが一人で帰れる……」
「いいから帰れ」
 賢介のいつにもない表情に圧倒され、睦也は立ち上がった。