「お前のお袋さんの手前、そう言っただけさ。内心ではそんなこと、これっぽっちも思ってねぇよ」
「あれからもうすぐ六年経つんだ、そろそろ、お互い歩み寄ってもいんじゃないか?」
「そんな物分かりのいい連中じゃないんだよ。それにこいつもいるし」
 横目で優の方を見やると、賢介は不思議そうな顔で聞いてきた。
「優ちゃんも、正月は実家に帰らないのか?」
 しまった、そう思うには遅すぎた。賢介は優の家庭事情を知らないのだ。
「あぁ、そう言ってた……」
 賢介は府に落ちない、といった表情をしていたが、優のことに関しては深く詮索する訳にもいかず、黙ってグラスを傾けた。
「おれたちのことはいいから、お前はお前で楽しめよ。真弓ちゃんだっけ? お前の好みなんじゃないか? さっきも楽しそうに話してたし、もっとアピールしてこいよ」
 賢介は渋々立ち上がり、元の場所に戻って行った。秀樹と太輝、里美に真弓、そしてもう一人、名前は忘れてしまったが里美の友達は、楽しそうに笑っている。そこに賢介も再び加わった。ありふれた忘年会の光景が広がっている。その中で睦也と優だけが、その場に馴染め切れず、みんなの笑い声に合わせて笑い、そのピッチに合わせてグラスを傾けていた。