「おれで相談に乗れることなら、いつでも乗るからな」
 余計なお世話だ、そう口にした後で、後悔した。これでは賢介の言ってることを、肯定しているようなものだ。だが幸いにも、賢介は揚げ足を取るような奴ではない。次の話題を振ってきた。
「話は変わるけどさ、今年も帰らないのか?」
 まったく、人が触れたくない話題をどうしてこうも立て続けにしてくるのだ。
「おれには帰る場所なんてない」
 賢介は呆れたように溜息を吐いた。
「家のお袋が言ってたけど、お前のこと心配してるみたいだぞ」
 親同士が頻繁に連絡を取っているとは思えないが、狭い田舎だ、出先で顔を合わせ、そんな話が出たのだろう。