年末の忘年会シーズンとあり、予約なしで八人が座れる居酒屋がすぐに見つかるか危惧していたが、ここではクリスマスが活躍し、以外にもすんなりと見つけることが出来た。
「優ちゃんと、喧嘩でもしたのか?」
 宴会が始まって一時間経った頃だった。横に移動してきた賢介からの質問に、口に含んでいたビールを、思わず吐き出しそうになった。
「なんだよ、急に」
「相変わらず分かり易い奴だな。何かお前らを見てると、ぎこちないつうか、ぎくしゃくしてるんだよな」
「別に、喧嘩なんかしてねぇよ」
 そう口にしつつも、賢介の洞察力の鋭さに舌を巻いていた。
 あの日から早くも二週間近く経つが、今でも二人の間には埋め切らない溝が、その距離を引き離していた。それでも一緒に暮らしている以上、嫌でも顔を合わせなくてはならない。お互い表面上はいつもとおりに振る舞っているが、それはどこか演技がかっていた。そしてそれを賢介に、目ざとくも見抜かれてしまったのだ。