深い眠りと、その延長線上のような覚醒を繰り返す内に、いつしか日は傾いていた。体調も一時に比べればだいぶ良くなった。この分なら、明日からはバイトにも行けるだろう。そう思うと、急に空腹感を覚えた。考えてみれば、昨日の昼に賄いを食べて以来、何も口にしていない。食べるという行為が、念頭から欠けていたのだ。
 もう時期、優も帰って来る。お粥でも作ってもらえばいい。
 そう思った次の瞬間、睦也は自嘲の笑みをもらした。食欲が一時、優への怒りを忘れさせていたからだ。自分自身の単純さが、可笑しかった。
 許してやればいいじゃないか。
 心の中から再び声が聞こえた。
 頭では分かっている。だから、気持が追い付くのを待ってくれないか? 
 その声に、睦也は答えた。
 それから三十分たった頃、ゆっくりとドアの開かれる音が聞こえた。