許してあげればいいじゃないか? 夢を諦めさせる必要はないだろ? 
心の中から声が聞こえた。
 分かってる、頭では分かってるんだよ。でも、気持ちが着いてこないんだ。
 睦也はその声にそう答えた。
 意地を張っているのも確かだ。だが、分かっていてもどうにもならなかった。己のエゴのために夢を諦めさせ、その責任を負う自信はない。優を愛してる、一生かけて守りたいと思う。それでも、こんな生活をしている限り、責任など負えるはずがない。かといえ、見返りなく許せる程の心の広さもなかった。
 ではどうすればいい? その答えを見つけ出すのは、優自身だ。誰かに求めるものではない。その答えを見つけ、決断を下し、納得するのは、優自身なのだ。
 布団から一枚毛布を剥ぎ取ると、そっと震える肩の上にかけた。これが今の睦也に出来る、唯一の優しさだった。