すっかり暗くなった寒空の下、睦也は途方に暮れていた。今日はさすがに帰らないとだろうか? この体調でもう一晩マンガ喫茶で過ごすことは、正しく自殺行為だ。そして財布の中身も、それを許しはしない。この時間なら、まだ優は仕事中のはずだ、帰ってすぐに寝てしまえば顔を合わすこともない。震える体を抱き抱えるようにして、家路を急いだ。
 バイト先から歩いて十分足らずの道のりが、普段の倍以上に感じた。一歩進む度に体調は悪化していく。どうやら、本格的に風邪を引いてしまったようだ。
やっとの思いでアパートへと辿り着き、一先ず胸を撫で下ろした。部屋の明かりは消えていたのだ。無人であることは間違いない。
 玄関の鍵を開け、部屋の中に足を踏み入れると、何かに足をぶつけた。それはスーパーの買い物袋だった。昨日、優が買ってきたものが、そのまま放置されていたのだ。
 この寒さだ、このままにしておいても腐りはしないだろう。それよりも、一刻も早く眠りたい。