「おはようございます」
 奈々の快活な声が、頭に響いた。
今日はよりによって土曜日かよ……。こんな体調で、昼時のラッシュを捌けるだろうか? 
「どうしたんですか、その格好。寒くないんですか?」
 寒いに決まってんだろ! 
そう言ってやりたいのを我慢し、出来る限りの笑顔を作った。
「昨日メンバーと飲み過ぎちゃって、頭を冷やすためにさ」
 滅茶苦茶な言い訳だが、筋が通ってないこともない。咄嗟の言い訳にしては、上出来だ。訝しそうな視線を送る奈々を横目に、早々と更衣室に向かった。
 案の定、昼は込みに込んだ。体調が万全でない状態で、全てを完璧にこなすことは不可能だった。結局、大量の廃棄を出してしまった。こんなこと、バイトを始めたころ以来だ。