「すみません、もう一杯、同じのを」
 もう何杯目だろう、何時間こうしているのだろう? 家を飛び出した睦也は、駅前のバーで、一人ウィスキーのロックを飲み続けていた。
 バーテンダーは睦也の前に新たなそれを置くと、灰皿を変えてその場を去った。
「……何が夢だよ」
 こうしているこの瞬間も、ネットを通して全国に優の露な姿が配信され続けている。何万、何十万という卑猥な視線がその姿に注がれ、汚されていく。
 行き場のない憤怒が、マグマのように煮えたぎり、睦也の胸を焼き尽くしていく。
 おれだけの体なのに、おれだけが見ることを許された……。
 考えれば考える程、悪循環にはまっていく。分かっていながらも、止めることが出来なかった。
 睦也がなけなしの金をはたいて誕生日プレゼントを探している間、優は用意された水着に着替え、審査員の前でチャチな夢を語り、カメラマンに指示されたポーズを取り、可笑しくもないのに笑顔を振りまいていた。