こんなになるまで、おれは何をしていたんだ? 大切なものをたくさん犠牲にしてまで、何を求めていたんだ? それは心の底から求めたものだったのか? それを否定してはならない。否定してしまったら、今の自分を全て否定することになる。
 だが、今のおれが正しいと、胸を張って言えるか? ……言えはしない。なぜならば、今のおれには、何も残っていない。
 睦也は成す術もなく、真赤に染まり、中身を失ったそれを眺めていた。