「止めてよ。私は今でも睦也が好き! 一日だって忘れた日はないの」
 懐かしい声。優との思い出がフィードバックし、胸が締め付けられる。
始めてのデート、水族館に行ったことを覚えているか? 緊張して、あまりお前は喋らなかったな。そっと握った手を、もっと弱い力で握り返してくれたな。その帰りに告白したんだ。少し俯きながら、頷いてくれたな。一緒に暮らそうと言ったとき、お前は迷わずに頷いてくれたな。喧嘩はあまりしなかったな。……あの一回以外は。あれから全てがおかしくなってしまったんだ。あんなことがなければ、今もお前は隣にいたのに、こんな電波を通さずに、直接その声を聞けたのに。何で、何でこんなことになってしまったんだ? 
 だが、どれだけ悔いてももう戻ることは出来ない。目を瞑り、奥歯を潰れる程に強く噛み締め、声を振り絞った。