優はその男と付き合うのだろうか? 二人が仲良く手を繋いで歩く姿が浮かぶ、そいつに向けられた笑顔が浮かぶ、止めればいいと分かっていても、それは続いた。形のいい唇が奪われ、その腕に……。
 睦也の中であの魔物が目を覚まそうとしていた。嫉妬という魔物が。
 だが、睦也はその魔物と格闘した。これ以上自分のエゴのために、優から大切なものを奪うことは出来ない。その代償として、睦也は何一つとして捧げることが出来なかった。そしてそれは今も、……変わらない。
『付き合うのか? おめでとう』
 送信ボタンを押した。これでいいのだ、そう言い聞かせながら。
 家に着くと、疲れが一気に押し寄せてきた。冷蔵庫の中から缶ビールを取り出し、力なくソファーに座りこんだ。