「お父さんも、あなたのことを認めているのよ。口にはしないけど、デビューの件も、ずっと気にしてたのよ」
「結果を聞いて、うすら笑ってたんだろ」
 父親は既に酔って寝ていた。豪快な鼾がここまで聞こえてきた。
「そうじゃないの。あの人も、今回の事故で変わったのよ。弱くなったの。工場を告げないと言われたとき、あの人はすごく落ち込んでた」
「嫌味かよ」
「違うの! ……それで吹っ切れたのか、自分でどうにかしなければ、そう思ったのか、リハビリも、左手での生活の訓練も、それから必死にやるようになったのよ。もしあそこで甘えていたら、あの人はきっとダメになってた」
 母親が、何を言いたいのか分からなかった。
「睦也、たまにでいいから、お正月だけでもいいから、帰ってきてくれないかい。私たちに残された肉親は、あんただけなんだよ」
 睦也は返事をすることも、頷くこともできなかった。