その晩、通夜を終えた睦也は、誰かが用意した日本酒を飲んでいた。弔い客のいなくなった家には、睦也と睦也を育てた二人しかいなかった。
「睦也、いいかい」
 母親は、返事を待たずに正面に座った。
「ありがとね、来てくれて。お父さんもあんなだし、あんたが来てくれて、心強いよ」
 久々に目の当たりにしたその顔は、記憶のそれよりも大分老けていた。それは今回の不幸によりではない。振り返ればアッと言う間だったが、そこには確実に六年という月日が流れていた。それを、細かい皺が物語っている。親が老けていくことがこんなにも動揺を誘うとは、睦也は想像すらしていなかった。
「おれは婆ちゃんのために来たんだ。勘違いすんな」
 それが、面と向って口にした最初の言葉だった。強がりでも言わないと、心の動揺を見透かされそうだった。