腰が曲がったり、体のところどころにガタが来ていたとしても、祖母はまだ八十になったばかりだった。近年の平均寿命を考えれば、後五・六年は元気でいてくれると信じていた。
 祖母の命を無情にも奪い去ったのは、脳梗塞だった。詳しいことは分からない。脳梗塞に関して、睦也の知識ではたかがしれている。
 流れる景色は、青空の下輝いていた。この世の中は、人一人が亡くなっても、何事もないかのように活動を続ける。それを恨む訳ではない、睦也もそうやって生きてきた。電信柱に〈○○家の葬儀会場こちら〉、と書かれた立て札を目にしても、何とも思わなかった。だが、実際にその渦中に立たされると、それは酷く虚しいことのように思えた。何十年と続いた、偽りのないドラマが一つ、幕を閉じたのだから。