睦也さん、起きて下さい。……睦也さん。
 静かに目を開いた。どこかで見たことのある光景だ。デジャヴか? 
「着きましたよ。立てますか?」
 思い出した。これはデジャヴではない。あのとき隣にいたのは、奈々ちゃんではないのだから……。
「うん、大丈夫」
 あのときと同様、睦也は強がった。案の定、足元はふらつき、咄嗟に回された腕に助けられた。
「ごめんね、迷惑かけちゃって」
 まったく同じだ。優は、おれの誕生日を覚えているだろうか? 覚えていたとしたら、どんな思いで過ごしているのだろう? 
 睦也は小さく笑った。今更そんなことを考えている自分自身が、可笑しかったからだ。
「どうしたんですか? 一人で笑って」
 奈々の不思議そうな顔が映った。
「何でもないよ。ここからは一人で帰るよ。ありがとう」
 改札を出た睦也は、そう言って肩にかけられた腕を下ろした。