枕元でマナーモードに設定された携帯が、細かく振動を繰り返す。もしかしたら、そう思った睦也は素早く携帯を開いた。だが、液晶ディスプレイに浮かび上がった数字は、睦也が期待していたそれとは違っていた。むしろ、それは不吉な番号だった。市外局番から始まる見なれた数字。そして、二度と見たくなかった数字。
　時間はまだ八時を過ぎたばかりだ。一体、こんな朝早くに何のようだ？　いや、どんな風の吹き回しだ。
　無視をしようかと思ったが、それは必要なまでに動き回っていた。一度その動きを止めても、数秒置いてまた動き出す程に。根負けした睦也は、仕方なく通話ボタンを押した。