「彼女とは別れたんだ」
睦也は自らの口から発せられた言葉に驚いた。奈々は困惑の表情で見つめ返してきた。母親に悪戯がばれたときの子供のような瞳をしていた。
「別に隠すことでもないしさ、気にしないで」
気まずい沈黙が流れる。
何でおれが気を使わなくてはならないんだ?
睦也は内心で舌打ちをした。
「あっ、よかったら次のライブ遊びに来てよ。新曲も披露するし」
その場を取り繕うために、睦也はそう口にした。
「いつですか? 睦也さんが作ったんですか?」
奈々の表情がパッと明るくなったのを見て、睦也はそっと胸を撫で下ろした。あんな表情のまま別れられたら、後味が悪い。
「ゴールデンウィーク中なんだけど、シフトと被らないかな? 曲はおれが作詞作曲」
「大丈夫です、何とかします」
「じゃ、今度チケット持ってくるよ」
指元に微かな熱を感じ視線をやると、煙草の火がフィルターにまで迫っていた。それを踵で踏みつぶし、新たな一本を抜きだす。それが合図だと察してくれたのか、奈々は「お疲れ様です」と言って歩き出した。その背中を見送りながら、煙草を一本無駄にしちまったと、睦也は毒づいた。
睦也は自らの口から発せられた言葉に驚いた。奈々は困惑の表情で見つめ返してきた。母親に悪戯がばれたときの子供のような瞳をしていた。
「別に隠すことでもないしさ、気にしないで」
気まずい沈黙が流れる。
何でおれが気を使わなくてはならないんだ?
睦也は内心で舌打ちをした。
「あっ、よかったら次のライブ遊びに来てよ。新曲も披露するし」
その場を取り繕うために、睦也はそう口にした。
「いつですか? 睦也さんが作ったんですか?」
奈々の表情がパッと明るくなったのを見て、睦也はそっと胸を撫で下ろした。あんな表情のまま別れられたら、後味が悪い。
「ゴールデンウィーク中なんだけど、シフトと被らないかな? 曲はおれが作詞作曲」
「大丈夫です、何とかします」
「じゃ、今度チケット持ってくるよ」
指元に微かな熱を感じ視線をやると、煙草の火がフィルターにまで迫っていた。それを踵で踏みつぶし、新たな一本を抜きだす。それが合図だと察してくれたのか、奈々は「お疲れ様です」と言って歩き出した。その背中を見送りながら、煙草を一本無駄にしちまったと、睦也は毒づいた。


