「この曲を、次のライブでやりたいと思ってる」
 その提案には、賢介も驚きを隠せないでいた。
「ちょっと待てよ、確かにいい曲だよ。でも次のライブがどれだけ大切か分かってるだろ? そのライブで新曲をやるなんて無謀だろ。おれらがいくらいいと思っていても、お客さんの反応は見てみないと分かんないんだぞ。それにアレンジにも時間がかかるし、歌詞だって出来てないじゃないか」
 太輝の言い分は確かだ。だが睦也は怯まなかった。
「賭けだってことは分かってる。でもその賭けが成功すれば、大きなインパクトを与えられる。歌詞は次の練習までに必ず書きあげてくる。……正直、私情が絡んでいることも確かだよ。みんなを巻き込むのは申し訳ない。でも、どうしても次のライブでやりたいんだ。頼む、協力してくれ」
 睦也は頭を下げた。これくらいで我儘を聞いてくれるのであれば、何時間でもこうしてよう。