それは、ネックレスだった。優の二十回目の誕生日を祝い、睦也がプレゼントした。
半年の間、睦也の首にかかっていたそれは、もはや体の一部になっており、着けていたことすら忘れていた。
 そっと首から外すと、逆に違和感が残った。この感覚すら、いつか消えてしまう。そう、いつか消えるのだ。この胸を突き刺し、抉るような痛みも、悲しみも、消えるのだ。いくつもの失った恋が、愛がそうであったように。恐れることはない。時の流れがいつか、優のことさえも思い出という過去に変えてくれる。
 掌に乗せたハートの欠片は、涙の粒のようだった。二度とハートを描くことがないと知り、泣いているのだ。
 睦也は立ちあがり、クローゼットの奥にそれを閉まった。自らの思いを封印するかのように。きっと優も、今頃同じことをしているだろう。なぜかそう確信できた。