軌跡

　黙り込む睦也に対し、賢介は続けた。
「優ちゃんへの思いを、つまらない意地で台無しにするのか？」
「つまらない意地？　賢介にとってはつまらない意地かもしれない。でもおれにとっては……」
「つまらない意地だろ。そんなもんのために、優ちゃんと終わりになっていいのか？　お前の気持ちはその程度だったんか？」
「そんな訳ねぇだろ。……今だってあいつへの気持ちは変わんねぇ。先のことだって考えてた。いつか、いつか一緒になれたらって。でも……」
「だったら！」
「でも、しょうがないだろ」
　睦也は自嘲にも似た、諦めの笑みを浮かべた。確かにつまらない意地かもしれない。だが、そんな意地さえも、払拭出来なかったのだ。