「急に押しかけて来るなんて、何かあったのか?」
 翌日バイトを終えた睦也は、その足で賢介の住むアパートに向かった。そして今までのことを全て話した。心に巣食った魔物に関して以外は、全て。
「お前はそれでいいのか? このまま終わりで」
 聞き役に徹していた賢介の、一言目はそれだった。
「いい訳ないだろ。でもしょうがないんだ。あいつの気持ちは、痛いほど分かるんだから」
「出て行った気持ちが、か?」
 あぁっ、睦也は力なく答えた。
「分かるなら、優ちゃんがどうして欲しいかも分かるだろ?」
「おれにも夢を諦めろと?」
「そんなこと言ってないだろ。それにお前に諦められたら、おれたちも困る。優ちゃんだって、そんなことは望んでないだろ」
 では、優は何を望んでいるのだ? 睦也が優に対して抱いていた嫉妬の念と、優が睦也に対して抱いていた感情は違うのか? 睦也は自問自答した。だが、いくら考えようとも、その答えは分からなかった。