留守番電話への接続を知らせる電子ボイスは、いつの間にか、電源が入っておりません、というアナウンスに変わっていた。
優は今、どこで何をしているのだろう? おれは何を求めて、リダイアルボタンを繰り返し押しているのだろう? 
 半年前、睦也が家を飛び出していったあの夜、優もまた、何度となくリダイアルボタンを押したのだろう。そして突然目の前に降り立った孤独や不安の中、葛藤し続けたのだろう。何が大切で、何を求め、何が必要なのか。そしてその結果、夢を諦めた。安らげる場所の、代償として……。
 暗闇の中で光る二つの瞳を思い出す。睦也がいればいい、そう言った瞳を思い出す。今ならば、そのときの気持ちが分かる。睦也もまた、答え無き自問自答を繰り返していた。