翌朝目覚めると、優の姿は既になかった。今日は早番なのだろう。睦也もすぐに身支度を整え、バイト先へと向かった。
 いつもと変わらぬ八時間労働を終え、夕焼けの中家路に向かう途中、思い立った。
 最近、優には心労をかけてばっかりいる。忙しさにかまけて、ろくなフォローもしていない。二人で出掛けたのも、正月に婆ちゃんの家に行ったきりだ。たまには夕飯くらい作ってあげよう。優の好物を。
 駅前のスーパーに寄り、買い物を済ませると、メールを送った。夕飯は睦也が作ること、買い物の必要がないことを。
 家に着いたのは七時を過ぎた頃だった。すぐに準備をすれば、優が帰ってくるまでに間に合う。メニューはオムライスの上にビーフシチューをかけた睦也得意の一品、それに合う赤ワインも買ってきた。
 優の喜ぶ顔を想像しながら調理すること一時間、後は卵を焼くだけとなった。だが、優は帰ってこない。残業にでもなったのだろうか? 携帯をチェックするが、メールの返事も着信もない。試しに電話をしてみたが、すぐに留守番電話に切りかわてしまった。まだ仕事中なのだろう。