「今日、ヒロポンさんが顔を出すって」
 桜舞落ち、青い新芽をつけ出した四月の三週目、賢介は三人の前で切り出した。当初、睦也が務めていたヒロポンとの連絡係は、いつの間にか賢介へとシフトされていた。こういう細かい役は、賢介の方が向いているのだ。
「何の用だろうな?」
「おれも詳しい内容は聞いてないんだ」
 ライブには毎回のように顔を出してくれるが、練習に顔を出すことは珍しい。四人は、緊張の色を隠せなかった。
「急に時間が出来た。そんな感じじゃないか? まぁ、いつもどおり練習しようぜ」
 楽観的なのか、みんなの気を楽にしようとしたのか、その真意は定かでない。だが、太輝の一言によって、肩の力が抜けたのは確かだった。