軌跡

　それからは、正に休みなしの日々が続いた。バイトをこなし、個人での練習はもちろん、週に二度のスタジオ練習。それぞれの休みの日も、睦也と賢介はホームページ作りやチラシ作りに没頭し、太輝と秀樹はレコード店を駆け回った。そして隙間の時間を見つけては、ＣＤをコピーしていく……。
　努力のかいもあり、寒さも峠を越えた三月にはホームページはリニューアルされ、デモテープを置かせてくれる店は十店舗となった。だが、すぐにその効果が発揮されることもなく、徐々にその成果があらわれ始めたのは、桜も咲き誇る、四月になってからだった。
　その日、出番を終えた四人がライブ後のアンケートをチャックしているとき、その変化に気付いた。Locusを目的に来たお客さんが増えていたのだ。今までの倍になったなど、劇的な変化が起こった訳ではない。増えたのは、精々十人前後だった。消費されたデモテープの数は、ゆうに百を超えている。それを考えれば、多いいか少ないかは分らない。だが、確実な手ごたえを四人に与えた。そしてそれは、さらなるやる気へと繋がった。