それは、嫉妬という感情だった。
 成功に近づくことに対する嫉妬。それは身近であればある程に、同じような大志を抱いていればいる程に、強く、卑しくなる。
 睦也はハッとした、それはかつて、睦也自身が優に対して抱いたものではないだろうか? そしてそのとき、睦也を鬼神のように怒り狂わせ、結果的に優から夢を奪ったのは、それだったのではないだろうか? 
 違うそんな情けない男ではない。
そう否定する一方、それは自然と、心の中の未開拓であった場所に馴染み、急速に根を伸ばしていった。
 先を越されてたまるか、あんな屈辱は二度と味わいたくない、呪いのように繰り返しながら。
 最低だ。そう思っても、その根の侵食を食い止めることが出来なかった。自分の弱さや汚さが、次々とあらわになっていく。その姿は、睦也自身を震撼させる程に、醜く、歪な形をしていた。目を背けようにも、それは許されない。いくら目を強く瞑ろうとも、それは睦也自身に巣食った魔物なのだから。
 睦也はその魔物と対峙することも、ましては退治することも出来ずに、ただただ天井を睨みつけていた。