「ごめんね。今日、……あの日なの」
 それが嘘だと分かっていた。あの日まではまだ一週間早い。一緒に暮していれば、それくらい分かる。
 睦也を起こすと、優は立ち上がり、布団の用意を始めた。
「明日も早いし、先に寝るね」
 睦也は情けなくなった。無理するな、その一言も言えず、体で誤魔化そうとしたことが。あそこでたった一言、お前ももう一度夢を追えよ、そう言ってあげれば、どれだけ救われただろう? 二人を待つ明日も、その表情を変えたかもしれない。だがその言葉は、ついに優の耳に届くことはなかった。たちの悪い胆のように、いつまでも喉に引っ掛ったまま。