車窓からの景色は、全てが闇に染まっていた。時折輝く、街灯の灯りや車のヘッドライトは、流星のように流れていく。まるで、銀河鉄道にでも乗っているようだった。電車はレールの上を音もなく進み、聞こえてくるのは静かな寝息だけ。睦也の左肩を枕にした優は、いつの間にか眠り、その僅かな重みが、心地良かった。
 人はいつか一人になる。産まれてきたときが一人ならば、この世を去るときも一人なのだ。そしてそのときは、大切な誰かを残し……。
 そうだとすれば、その大切な人と一緒に過ごす時間は、どれだけ貴重なものとなるのだろう? 今の睦也には、想像もつかなかった。だがその片鱗を今日、垣間見ることが出来たような気がした。
 そっと握りしめた右手は、更に小さな力で、握り返してきた。