「………要ちゃん忘れ物?」


「あ?いや…」



既に出ていったドアの方をチラリと見て



「阿部と何かあったのか?」


「特にはないけど……そうそう!今日、阿部さんと飲みに行くから晩ご飯いらなくなっちゃった」


「阿部と?」


「うん!それより何かあったの?」




会社内では必要以上に絡む事が少ないので、わざわざ要が足を運のだ事が気になった



「いや、買い物頼もうと思って」



料理担当は要だが、買い物担当は早く帰る方がするようなっている


美亜の方が退社時間が早いので、要から買い物リストを言付かり必然と買い物をして帰るようになっていた



「何にする予定だったの?」


「生姜焼き」


「おおっ!!」


「だけど飲みに行くんだったら、晩飯は要らないよな?」



ニヤリと意地悪く口角が上がった


普通の人間ならば悩む要素ではないのだが、美亜にとって『生姜焼き』という品はプリン同等の大好物で、要の作る『生姜焼き』は絶品であり、なによりのご馳走だ



「う〜〜〜ん…」



美亜のツボを押さえるのなんて容易い事だ



「う〜〜〜ん…」



円になっている机に添うように悩み歩く



「……………やっぱり―――――――!!」