亀吉の桜

中学生になった
陽一君は

ほんの少しだけ
痩せたけど、


あの日から
何も変わらず

僕の横にいる。



そして僕に
色んな話を
聞かせてくれた。


親への文句。

勉強しろって
本当うるさいんだよ。
って。


友達の話。

田中君って面白いんだけど、頭も良いんだよ。
って。


学校の先生への
いたずらの話。

職員室の入口に落書きしてきたんだ!
って。


公園で女の子に
告白された自慢話まで
聞かされた。


あんまり話した事無い子に好きって言われちゃった。
って。




たまに寝たり、
返事もせず
ぼんやりしている僕に、

それでも


一生懸命、


一生懸命、



話をしてくれた。





2回目の
夏が来た時、


陽一君に
初めて

彼女が出来た。


陽一君は
嬉しそうに
僕に彼女を紹介したが、

彼女は
なんて言ったらいいか
困ったような顔を
していた。




その頃には

全ての桜が
葉桜になり、


そのうち
桜の花が全て散り、


鮮やかな緑だけが
輝き始める。