陽一君が

大好きだった。



りんご飴の行列で
12歳の陽一君が

自分のお小遣いを
嬉しそうに
握り締めていた
横顔。


今でも
こんなにハッキリ
思い出せる。


その顔が
こちらを向き

一気に
変貌した事も。



ぼくらを見て、
一気に顔色が変わり、
りんご飴の
行列から出て、

ぼくらを可哀相だと言って
救い出してくれた。



あの時。

すでに僕は
死んでいたはずだった。


それなのに、


生きたいと

強く
強く
願ってしまった。


あんな幸せな横顔を

僕は見ていたのに。



陽一君の
幸せな横顔に
助けを求めてしまった。



変貌した
陽一君の青ざめた顔に
救って欲しいと
願ってしまった…。



あんな顔を
見たかったわけじゃない。


僕は陽一君に
させてはいけない顔を
させてしまった。




本当は
気付いてた。





だけど、

それでも



僕は

本当に



陽一君が

大好きだった。