「ミドリー。相沢君が呼んでるよー」
放課後、最近は梨佳ちゃんからこうやって呼ばれるようになって一週間。
「わかった―」
私には彼氏が出来た。
教室の扉にいる相沢くんを気にしながら教科書を慌てて詰め込む。
「ごめんね。待たせちゃって」
「大丈夫。慌ててるミドリを見るのも面白かったから」
目を細めてそう言う彼に、私はまた胸を踊らせる。
「帰ろっか」
そう言って私の右手を握って微笑む。
私は頷くしかなかった。じゃないと顔を赤くしてるのを相沢君が気づくかもしれない。
「“帰ろっか“……ブフッ!れーと気持ち悪っ!」
隣のクラスからひょっこり顔を出して、相沢くんを指差して笑っている未央ちゃん。
「うるせ~」
相沢くんは笑って言った。
未央とは中学校の時から仲が良かった。相沢くんはそう言ってる。
「お前も彼氏くらいつくれば??まぁ、出来ないか!」
「馬鹿れーと黙れっ!!…ミドリちゃんバイバイ!」
私は未央ちゃんの勢いについていけなくてペコリと頭を下げるだけだった。