だから私は気付かなかったのかもしれない



澄ました顔で読書に耽っていた私を“王子様”の笑顔でなく

そう、例えるなら…獲物を見つけた猛獣のような


そんな妖しい笑みを浮かべた東條直人がこちらを見ていたことなんて…



「へぇ~…おもしろいじゃん。
俺にそんなこと言ったのあんただけだぜ?」


そして、その後呟かれた彼が垣間見せた獣の一言は、朝のチャイムの音によって掻き消されてしまったのだった


この時、東條直人が何かを呟いたのは知っていた
しかし、この時の私はそんなこと気にも止めていなかった


それが後々、私の人生を大きく変える出来事に発展することになるなんて




この時の私は想像もしていなかった