「優月がハンカチを持って両親のところに戻ろうとしたとき…一台のトラックが走ってきたのよ
山道をカーブしてきたトラックはスピードも出ていて、とてもじゃないけどブレーキをかける余裕なんてなかった
もう助からないって思ったとき、優也さんと羽月さんが優月の側に駆けつけて自分たちの命と引き換えにあの子を守ったの…」
「なん、だって…」
「事故で…亡くなった…?」
「カイチョーの両親が、」
「先輩の…目の前で…」
静まり返った生徒会室にたいして大きくもない声がよく響く
重々しい空気のなか私はさらに話を続ける
「優月は命こそ助かったものの…頭を強く打ち付けて視力が急激に落ちていったわ…多分、半年以上失明したのと同じ状況に陥った…
そう…優月は血に染まった両親の姿を最後に視力を失ったの
何も見えない暗闇のなか…思い出すのは脳裏に焼き付いた血塗れの両親の姿…
だから優月は眼鏡を外すことを極端に嫌がる
周りが見えなくなれば思い出すのはあの日の記憶だから…」
私がこの事故の真相を知ったのは事故発生から二年後、私たちが小学5年生の時
事故があってから一年間、優月は病院に入院をしていた
その間の面会は一切禁止とされ、優月に会えたのは一年後の4年生の半ば
一年ぶりに会った優月はまるで別人だった
明るかった雰囲気は消え、絶対に笑わない…冷静沈着で物静かな人間になっていた
…私はそんな優月を見るのがとても辛かった

