「悠斗っ…!」

朝、学校へ行く途中で見慣れた後ろ姿を見つけた。
走りながら、20mほど先を歩く幼なじみを呼びとめる。
――が、聞こえていないのか 彼はちっとも止まる素振りを見せてくれない。むしろ、歩くスピードがだんだん早くなっているような…。

「悠斗…っ!悠斗ってば!!」


彼にやっと追いついたが、息がきれてなかなか上手く喋れない。
そのまま並んで歩き、1分ほど経った頃だろうか。


「…足、どうしたの」

彼が突然口を開いた。珍しいな。

「あ、なんだろ。どっかでぶつけたのかな」

彼に言われて気づいた。
膝の少し上あたりの色が、青紫色になっていた。


「でも、大丈夫だよ。あんまり痛くないし!ありがとね!悠斗」


――あっ、また、だ…。

心配かけないように笑いながら悠斗に言ったつもりだったが、私の顔を見るなり、悠斗は顔を背けてしまった。


…いつものことだもん。気にしない、気にしない。

少しショックを受ける自分を、心のなかで元気づける。
高校2年生の私たちだが、中3の秋頃から、悠斗はあまり口をきいてくれなくなった。
話しかけても、顔をそらされることが多い。


最初は、なんでだろうって思ったし、悠斗に理由を聞いたこともあった。
でも、聞いても悠斗は答えてくれなかったし、周りへの態度と私への態度との違いから、自分は悠斗に嫌われているんだということはだんだんと自覚できた。

それでも私にとって悠斗は大好きな幼なじみだから、機会を見つけては悠斗に話しかけるようにしている。――学校の外でだけだけど。