こっちは男女のそういった感情はさらさらなく、最も信頼できる同期仲間の一人として接していただけなのに、とんだ勘違いでいじめの標的になってしまった。
結局、孝太郎が彼女に説明し、私に嫌がらせをするのをやめるよう言ったが、それが私をかばってのことだと彼女は逆上し、職場で私に平手をくらわせた。
幸い、午前中の早い時間帯だったので空港利用客は少なく、大事にはならずに済んだ。
しかし、その現場を目のあたりにした直属の上司が先輩社員の一方的な思い込みと、私情を職場に持ち込み更には相手に手をあげたということで一週間シフトから外し、その後は内勤へと異動させたのだった。私は何もそこまで処罰を与えなくてもと思ったが、上司とその上の決定とあり何も言えず、通常通りシフトに入り業務をこなしていた。
その一部始終を聞いた孝太郎は彼女の失態を私に詫びた。
「滝沢にはマジ迷惑かけたな、ごめんな」
「いいよもう、何だかこっちが罪悪感ありあり。彼女の様子どう?」
「実は内勤になってからまだ会ってないし、話もしてない。ちょっと距離置いてみようと思ってさ」
「何それっ!別れたりしないよね?そんなことになったらそれこそ私が恨まれる」
「そんなことさせないよ。滝沢にはもう手を出させないから」
そう言った孝太郎が何だかいつもよりたくましく感じた。