「泣いてる……の?」

りんごの細い指先が、俺の目元をなぞる。

「え……?」

その時初めて、俺は自分が泣いていたことに気付いた。

「泣かないで……」

「だって、だって、
 りんごが……
もしりんごが……」

死んじゃったら、どうしよう!

その言葉を口にしたら、ホントになりそうで、怖くて口にできなかった。

「どこにも行かないで……
俺のそばにいて……」

ギュッと、りんごを抱きしめる。

「ウミト……くん、
く、苦しいよぉ……」

慌てて力を緩める俺の腕の中で、ケホン、と小さく咳をするりんご。

俺は、そっと背中をなでた。