今から一週間ほど前、隣街カルシャンテに突然現れたらしい。

 魅惑的な緑色の眼を持つ、一匹の悪魔。

 街の自警団が退治しようと試みたが、いっさいの魔法が利かず、物理攻撃で斃(たお)してもすぐ蘇(よみがえ)るというのだ。


「不死身か?」

「みたいだねぇ」


 他人事だからか、のん気に返すマスター。


「手の打ちようがない」

「だから困ってるんだろうよ」

「話にならんな」


 と、酒代分のコインを置いてマントをひるがえした。肩より長い金糸の髪がそよ風になびくようにさらりと揺れる。


「待て待て、話は最後まで聞けって! とりあえず捕獲でいいんだってさ」

「……初めからそう言え」


 ため息をついてカウンターの椅子に座り直した。