「お部屋は、ツインとダブルのどちらになさいますか?」

「「ツインとダブル?」」


 施設の受付が発した言葉を、リュートとティリスは双子のように同じタイミングで復唱した。

 聞き慣れない言葉だ。普通の宿では一人部屋・二人部屋という区別だから。

そもそもこういったハイソサエティ──にリュートには見える──な場所は縁がない。

ティリスなら知っているかと振り向けば、彼女も頭の上に?(クエスチョンマーク)が飛んでいた。

 仕方なく受付に意味を聞くと、

ツインは一人用のベッドが二つ。
ダブルは二人用のベッドが一つ。


 ──どっちも二人部屋じゃないか!


 いきなりな桃色展開に、ティリスは頬を朱に染めて、リュートは顔を引きつらせた。


「……一人部屋はないのか」

「シングルもございますけど……別々のお部屋がよろしいのですか?」

「あたりまえだ!」

「も、申し訳ございませんっ。では、ご案内致します」


 ドスの効いた声に恐縮しながらも受付の女性は小首をかしげていた。
彼らを恋人同士と思っていたのだろう。

もしくは、話を通した団長がそのように吹きこんだか。

 年ごろの男女が二人きりで旅をしていると周りからそう受け取られ、時にあのマスターのように揶揄(やゆ)されることもよくあった。

 しかし……

 それを否定するたびに、そばにいる空色の乙女がせつなげな吐息を小さくもらすのだった。