「悪魔退治だと?」

「ああ、今一番金になりそうな仕事はこれだな。なんと、報酬3万ルピーだぜ! どうだい?」


 冒険者ギルドを兼ねた酒場。

まだ夕暮れ前で人もまばらなカウンターの片隅(かたすみ)で、威勢のいいマスターの声が反響する。

それに、グラスをかたむけていた青年が眉をひそめた。

 確かに3万ルピーは破格の報酬だ。半年は生活に困らない。だが……


「詳細を聞かないと、なんとも言えん」


 報酬の高さと危険度は比例する。腕組みをしながらぶっきらぼうに返した。

 そんな横柄な態度に、マスターは気を悪くした様子もなくつぶやく。


「まだ若いのに慎重だねぇ」

「……いくつに見えた?」
「は?」


 青年はやや身を乗り出して低い声でもう一度問いかけた。


「俺が、いくつに見えたんだ?」

「25くらい?」

「……詳細を教えろ」


 低い声がさらに低くなった。


 この青年は19歳。40代のマスターから見れば25でも19でも若いことに違いはないのだが。

たくさんの冒険者を見てきたマスターも、さすがにまだ10代とは見抜けなかったらしい。

 それも無理からぬこと。