「申し訳ありませんでした!!」


 カルシャンテの街にある自警団詰所(つめしょ)で、団員の声がそろって響きわたった。

 床につくくらい深々と頭を下げた集団の前にいるのは、
無愛想に腕を組んだリュートと、
てのひらを交差させながら集団に「頭を上げて」とうながすティリス。



 あの後──本物の悪魔の登場でリュートの疑いは晴れた。

 ギルドから派遣された冒険者だと説明すると、そのままいっしょに街へ向かうことに。

森にはいくつか簡易の転送魔法陣が用意されていて、魔導師の魔法で一気に街道付近まで移動することができた。

 だからあのとき突然気配が現れたのか、とリュートは一人納得した。

 普通に歩くと夕刻になるはずだったが、到着したのは太陽が空のてっぺんからほんの少しおじぎしたくらい。

そして、街の入口から一番近い『南自警団』の詰所に案内され──

──今に至る。



「もう気にしないで。リュートもあたしも無傷だし」


 ティリスは集団の先頭にいる男──アロルドに優しく声をかけた。


 まだ20代と若いが、この南自警団の団長らしい。

下げている頭は短い茶髪で、鎧から覗く褐色の肌は隆々としている。

リュートほどの身長はないものの立派な体躯(たいく)に恵まれた厳つい戦士だ。


 そんな男が、大きな体を猫のように小さく丸めて頭(こうべ)を垂れている姿は、なんともいたたまれない。

森でしきりに謝られたうえ詰所に着いても謝りっぱなしで、人の好(い)い乙女は少々とまどっていた。