──鮮やかな緑色。


 それが全ての答えだった。

 金色のショートヘアをなびかせ妖しい微笑をたたえた人影の正体に、あたり一帯の空気が凍りついた。

 人々の顔に“恐怖”の二文字を張りつかせて。


 ………………

 誰も微動だにせず、いつしか……風も凪いでいた。

 時を止める魔法でもかけられたのではないだろうか。そんな感覚に囚われていたとき


「悪魔だ……」


 凍てついた空間にヒビが入った。

 恐怖に張りついていた人々の顔に、じわり、じわり、と割れ目から水が沁み出すように別の感情が広がり始める。

つい先ほどまでリュートを攻め立てていたものが、今、正しく悪魔と呼ばれる存在に向けられ、
沁み出した水は煮えたぎるマグマへ変化を遂げようとしていた。

 悪魔は、さも楽しげに口角を吊り上げて見せた。