彼は、上領 有 という名の3年生だった。

 中等部一の人気を誇る、魅惑的な美貌の先輩。

 絹のような艶やかな、青を秘めた黒髪。

 象牙色の滑らかな肌は、炎天下の部活動にも拘わらず、それほど日焼けはしていない。

 すらりとした細身の長身に、長く伸びた手脚。

 きゅっと引き結ばれた形の良い口唇に、つんと高い鼻。

 凛とした眉の下には、長い睫毛を湛えた切れ長の大きな眼。

 
 そして、不思議に移りゆく光彩を放ち、時折緑がかっても見える、ブルーグレイの硝子玉のような瞳。


 決して、愛想の良いタイプではない。

 殊更、女子には冷たく、無関心らしい。

 しかし、その繊細に整った容姿の彼は、同級生は元より、下級生の憧れの的であった。


 故に、姫乃は労せずして彼の名を知ることになる。



 ―――かみりょう、ゆう。

 せ ん ぱ い―――。






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